退職・離職の手続き完全ガイド2026|保険・年金・税金・届出を網羅
最終更新: 2026年3月
「退職が決まったけれど、何から手を付ければいいかわからない」「退職後の保険や年金の手続きが不安」――そんな方のために、この記事では退職前から退職後までに必要なすべての手続きを時系列で完全解説します。健康保険の3つの選択肢、国民年金への切り替え、住民税の一括徴収、失業保険の受給手順、退職金の税金、そして転職先が決まっている場合のフローまで、2026年最新の制度に対応した完全ガイドです。
退職前にやるべき5つのこと
退職を決意したら、退職届を提出する前にいくつかの準備をしておくことが重要です。退職後に「あれをやっておけばよかった」と後悔しないよう、以下の5項目を必ず確認してください。
有給休暇の残日数を確認し、消化計画を立てる
有給休暇は労働者の権利であり、退職前に消化するのが基本です。退職日から逆算して、引き継ぎ期間と有給消化期間を計画しましょう。有給休暇の買い取りは原則として認められていませんが、退職時に限り会社が任意で買い取ることは違法ではありません。残日数は給与明細や人事部門で確認できます。
退職届(退職願)を準備する
退職届は退職日の少なくとも2週間前に提出する必要があります(民法第627条)。ただし、会社の就業規則で「1か月前まで」などと定められている場合はそれに従うのが一般的です。「退職願」は退職の意思表示で撤回可能、「退職届」は確定的な届出で原則撤回不可という違いがあります。円満退職のためには、まず口頭で上司に相談し、その後正式な書面を提出しましょう。
確定拠出年金(企業型DC)の移管先を決める
企業型確定拠出年金に加入している場合、退職後6か月以内に移管手続きを行わないと、資産が国民年金基金連合会に自動移換され、管理手数料が引かれ続けるうえ運用もできなくなります。転職先に企業型DCがあればそちらに移管、なければiDeCo(個人型確定拠出年金)に移管するのが一般的です。退職前に移管先の口座を開設しておくとスムーズです。
会社からの貸与物・返却物を整理する
社員証、名刺、PC・スマートフォン、制服、健康保険証、通勤定期券など会社から借りているものをリストアップし、返却の準備をします。健康保険証は退職日の翌日以降は使用できません。退職日に返却するのが基本です。万一退職日までに返却できない場合は、速やかに郵送で返却しましょう。
退職後の生活資金を確認する
退職後に無収入の期間がある場合、最低3か月分の生活費を確保しておくことをおすすめします。自己都合退職の場合、失業保険の給付開始まで約2か月の待機期間があるためです。また、退職後は健康保険料・国民年金保険料の自己負担が発生し、住民税も前年の所得に基づいて課税されます。退職後にかかる固定費を事前にシミュレーションしておきましょう。
- 有給休暇の残日数と消化スケジュールを確認した
- 退職届の提出時期と書式を確認した
- 確定拠出年金の移管先を調べ、口座開設を申し込んだ
- 会社貸与物の返却リストを作成した
- 退職後3か月分の生活費を確保した
退職時に受け取る書類一覧
退職日またはその後に会社から受け取る書類は、その後の手続きに不可欠です。特に離職票は失業保険の申請に必要で、健康保険資格喪失証明書は国保への加入手続きに必要です。受け取り漏れがないよう、以下の表で確認しましょう。
| 書類名 | 用途 | 受取時期 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 離職票(1・2) | 失業保険の申請 | 退職後10日〜2週間 | 会社が手続き後に届く。届かない場合はハローワークに相談 |
| 雇用保険被保険者証 | 転職先への提出・失業保険申請 | 退職日 | 入社時に会社が預かっている場合がある |
| 源泉徴収票 | 確定申告・転職先での年末調整 | 退職後1か月以内 | 退職金がある場合は退職所得の源泉徴収票も別途発行 |
| 年金手帳(基礎年金番号通知書) | 年金の切り替え手続き | 退職日 | 会社が保管している場合。マイナンバーで代用可能 |
| 健康保険資格喪失証明書 | 国保加入・任意継続の手続き | 退職後数日〜1週間 | 退職証明書で代用できる場合もあり |
| 退職証明書 | 各種手続きの証明 | 請求後遅滞なく | 会社は請求があれば発行義務あり(労働基準法第22条) |
退職後の健康保険(3つの選択肢)
退職すると会社の健康保険(社会保険)の資格を喪失します。退職翌日から無保険にならないよう、速やかに以下の3つの選択肢から手続きを行う必要があります。それぞれのメリット・デメリットを比較して、最もお得な選択肢を選びましょう。
選択肢1:任意継続被保険者
退職前の健康保険に最長2年間継続して加入できる制度です。退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。保険料は在職中は会社と折半だったものが全額自己負担になりますが、標準報酬月額に上限(2026年度は30万円)があるため、高収入の方にとっては国保より割安になることがあります。
- 手続き期限:退職日の翌日から20日以内(厳守)
- 保険料:退職時の標準報酬月額 × 保険料率(上限あり)
- 加入期間:最長2年間
- 扶養家族:在職中と同様に扶養に入れられる(追加保険料なし)
- 2022年法改正で任意のタイミングで脱退可能に
選択肢2:国民健康保険(国保)
市区町村が運営する健康保険です。退職後14日以内に住所地の市区町村窓口で加入手続きを行います。保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、退職翌年は保険料が高くなる傾向があります。ただし、会社都合による退職(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合は、保険料が最大7割軽減される制度があります。
選択肢3:家族の扶養に入る
配偶者や親族が会社の健康保険に加入している場合、その扶養に入ることで保険料の自己負担がゼロになります。ただし、年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)であることが条件です。失業保険を受給する場合、日額3,612円(年額換算約130万円)以上だと扶養に入れない点に注意してください。
| 項目 | 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 |
|---|---|---|---|
| 手続き期限 | 退職後20日以内 | 退職後14日以内 | 退職後速やかに |
| 保険料 | 全額自己負担(上限あり) | 前年所得に基づく | 無料 |
| 加入期間 | 最長2年 | 制限なし | 条件を満たす限り |
| 扶養家族 | 追加負担なし | 人数分の保険料が必要 | - |
| おすすめケース | 高収入で扶養家族あり | 前年所得が低い場合 | 条件を満たせる場合 |
任意継続と国保のどちらが安いかは、退職前の年収と居住地域によって異なります。任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × 保険料率」で計算でき、国保は市区町村の窓口で試算してもらえます。両方の保険料を比較してから決めるのが賢い方法です。
退職後の年金(国民年金への切り替え)
会社を退職すると、厚生年金の資格を喪失します。次の就職先が決まっていない場合は、退職日の翌日から国民年金の第1号被保険者に切り替える必要があります。手続きは退職後14日以内に住所地の市区町村窓口で行います。
手続きに必要なもの
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(マイナンバーでも可)
- 退職日がわかる書類(離職票・退職証明書・健康保険資格喪失証明書など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
- 印鑑(認印で可)
2026年度の国民年金保険料は月額17,510円です。経済的に支払いが困難な場合は、以下の免除・猶予制度を利用できます。
| 制度名 | 免除・猶予額 | 将来の年金への反映 | 条件の目安 |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 全額 | 1/2が反映 | 前年所得57万円以下(単身) |
| 3/4免除 | 約13,133円 | 5/8が反映 | 前年所得93万円以下(単身) |
| 半額免除 | 約8,755円 | 3/4が反映 | 前年所得141万円以下(単身) |
| 1/4免除 | 約4,378円 | 7/8が反映 | 前年所得189万円以下(単身) |
| 納付猶予(50歳未満) | 全額猶予 | 反映なし(期間のみ算入) | 本人所得57万円以下 |
退職(失業)を理由とする場合、特例免除の適用を受けられます。この場合、本人の前年所得を除外して審査されるため、通常より免除が認められやすくなります。離職票のコピーをお持ちの上、市区町村窓口で申請してください。
なお、配偶者が厚生年金に加入している場合、年収130万円未満であれば第3号被保険者として届け出ることができ、保険料の負担なく国民年金に加入できます。この届出は配偶者の勤務先を通じて行います。
退職後の税金(住民税・確定申告)
住民税の取り扱い
住民税は前年の所得に対して翌年6月から翌々年5月にかけて毎月の給与から天引き(特別徴収)されています。退職すると特別徴収ができなくなるため、退職時期によって対応が異なります。
| 退職時期 | 住民税の取り扱い | 具体例 |
|---|---|---|
| 1月〜5月退職 | 残りの住民税を最後の給与・退職金から一括徴収(義務) | 3月退職の場合、4月・5月分を最後の給与から天引き |
| 6月〜12月退職 | 一括徴収 or 普通徴収(自分で納付)を選択可能 | 9月退職の場合、10月〜翌5月分を一括 or 自分で4回に分けて納付 |
確定申告の要否
年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合は確定申告が必要です。年末調整を受けていないため、そのままでは所得税を払いすぎている可能性が高く、確定申告をすることで還付を受けられるケースがほとんどです。
確定申告が必要・有利になる主なケース:
- 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合 → 所得税の還付の可能性大
- 退職所得の受給に関する申告書を提出しなかった場合 → 退職金に20.42%の源泉徴収がされており、確定申告で精算
- 退職後に医療費が多くかかった場合 → 医療費控除で還付
- 退職後にふるさと納税をした場合 → ワンストップ特例が使えないため確定申告が必要
- 生命保険料控除・地震保険料控除がある場合 → 年末調整で処理されていないため確定申告で適用
確定申告の期間は退職翌年の2月16日〜3月15日です。還付申告の場合は1月1日から提出可能で、5年以内であれば遡って申告できます。e-Taxを使えば自宅からオンラインで申告できます。
失業保険(雇用保険)の受給手順
雇用保険に加入していた方は、退職後にハローワークで手続きを行うことで失業保険(基本手当)を受給できます。受給額は離職前6か月の賃金に基づいて計算され、おおむね賃金日額の50〜80%(上限あり)です。
受給の条件
- 離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(会社都合の場合は6か月以上)
- 「働く意思と能力がある」が「就職できない」状態であること
- ハローワークに求職の申込みをしていること
手続きの流れ
離職票を受け取る
退職後、会社から離職票-1と離職票-2が届きます。通常は退職後10日〜2週間程度かかります。届かない場合はハローワークに相談しましょう。
ハローワークで求職の申込み・受給手続き
住所地を管轄するハローワークに、離職票、マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)、写真2枚(3×2.4cm)、印鑑、本人名義の預金通帳を持参して手続きします。この日が「受給資格決定日」となります。
7日間の待機期間
受給資格決定日から7日間は「待機期間」として、全員に適用されます。この期間中はアルバイトを含む就業は認められません。
雇用保険受給者初回説明会に参加
待機期間終了後、ハローワークが指定する日時に説明会に参加します。ここで「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取ります。
給付制限期間(自己都合退職の場合)
自己都合退職の場合、待機期間の後に原則2か月の給付制限期間があります(5年以内に2回以上の自己都合退職は3か月)。会社都合退職の場合は給付制限なしで、待機期間終了後すぐに受給開始です。
4週間ごとの失業認定と受給
4週間に1回、ハローワークの指定日に出頭して失業認定を受けます。認定日までに原則2回以上の求職活動実績が必要です。認定後、約1週間で指定口座に振り込まれます。
受給額と受給期間の目安
| 離職時の年齢 | 被保険者期間 | 自己都合の給付日数 | 会社都合の給付日数 |
|---|---|---|---|
| 全年齢共通 | 1年以上5年未満 | 90日 | 90〜120日 |
| 全年齢共通 | 5年以上10年未満 | 90日 | 120〜180日 |
| 全年齢共通 | 10年以上20年未満 | 120日 | 180〜240日 |
| 全年齢共通 | 20年以上 | 150日 | 240〜330日 |
退職金の受け取りと税金
退職金は「退職所得」として分離課税され、通常の給与所得とは別に税額が計算されます。退職所得控除という大きな非課税枠があり、さらに控除後の金額の1/2のみが課税対象となるため、税制上非常に優遇されています。
退職所得控除の計算方法
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 計算例 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) | 勤続15年 → 600万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) | 勤続30年 → 1,500万円 |
退職金の手取り計算例
勤続25年、退職金1,500万円の場合:
退職所得控除を計算
800万円 + 70万円 ×(25年 - 20年)= 800万円 + 350万円 = 1,150万円
課税退職所得金額を計算
(1,500万円 - 1,150万円) × 1/2 = 175万円
税額を計算
所得税:175万円 × 5% = 87,500円、復興特別所得税:87,500円 × 2.1% = 1,837円
住民税:175万円 × 10% = 175,000円
合計税額:約264,337円
手取り額
1,500万円 - 264,337円 = 約1,474万円(手取り率 約98.2%)
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出してください。提出しない場合、退職金の全額に対して20.42%が源泉徴収されます(1,500万円の場合、約306万円)。申告書を提出すれば適正な税額のみ天引きされ、確定申告も原則不要になります。
転職先が決まっている場合の手続きフロー
転職先が決まっている場合は、退職後の手続きが大幅に簡略化されます。特に退職日の翌日に入社する場合は、健康保険・年金の切り替え手続きは転職先が行うため、自分で市区町村の窓口に行く必要はありません。
転職先に提出する書類
- 雇用保険被保険者証 → 雇用保険の継続手続きに必要
- 年金手帳(基礎年金番号通知書) → 厚生年金の加入手続きに必要(マイナンバーで代用可)
- 源泉徴収票 → 転職先での年末調整に必要(退職後1か月以内に届く)
- 扶養控除等申告書 → 転職先で記入・提出
- 給与振込口座届 → 転職先で記入・提出
空白期間がある場合の注意点
退職日と転職先の入社日の間に1日でも空白がある場合は、その期間中の健康保険と年金の手続きが必要です。例えば、3月31日退職・4月16日入社の場合、4月1日〜15日の間は国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
- 退職1か月前:退職届提出、引き継ぎ開始
- 退職2週間前:有給消化開始、貸与物の返却準備
- 退職日:健康保険証返却、書類受け取り
- 退職後〜入社前:空白期間があれば健保・年金手続き
- 入社日:雇用保険被保険者証・年金手帳を提出
- 退職後1か月:源泉徴収票が届いたら転職先に提出
なお、転職先が決まっている場合でも失業保険の受給手続きはできますが、入社日までの日数が少ない場合は受給額が限られます。再就職手当(残日数の60〜70%を一括支給)の方が有利な場合もあるため、ハローワークで相談してみましょう。
よくある質問
- 選択肢は「任意継続(最長2年)」「国民健康保険」「家族の扶養に入る」の3つです。扶養に入れる場合は保険料が無料なので最もお得です。それ以外は、任意継続と国保の保険料を比較して安い方を選びましょう。高収入で扶養家族が多い場合は任意継続、前年所得が低い場合は国保が有利な傾向があります。
- 住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後も支払いが必要です。1月〜5月に退職した場合は残りが一括徴収、6月〜12月の場合は一括徴収か普通徴収を選べます。退職翌年は前年の所得に基づく住民税がかかるため、収入がなくても負担が発生します。あらかじめ資金を確保しておきましょう。
- 会社都合退職は7日間の待機期間の後すぐ受給開始。自己都合退職は7日間の待機期間+原則2か月の給付制限期間の後に受給開始です(5年以内に2回以上の自己都合退職は3か月)。実際の振込は認定日から約1週間後です。
- 退職金は退職所得控除と1/2課税の優遇措置により、税負担は非常に軽いです。例えば勤続25年で退職金1,500万円の場合、税金は約26万円、手取りは約1,474万円(手取り率約98%)です。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出するのを忘れずに。
- 年の途中で退職し年内に再就職しなかった場合は、確定申告が必要です。年末調整を受けていないため、多くの場合で所得税の還付を受けられます。退職後の確定申告は翌年の2月16日〜3月15日(還付申告は1月1日から)です。
退職後の健康保険はどれを選ぶべきですか?
退職後の住民税はどうなりますか?
失業保険はいつからもらえますか?
退職金にかかる税金はどのくらいですか?
退職後に確定申告は必要ですか?
出典・参考資料
年金・退職金・老後資金をトータルで試算して、退職後の不安を解消しましょう。
参照データ・関連法令
本ページの内容は、以下の公的機関のデータ・法令に基づいています。
- 厚生労働省 - 雇用保険制度・健康保険・任意継続
- 日本年金機構 - 国民年金への切り替え手続き
- 国税庁 - 退職所得の税金・確定申告
- 総務省 - 住民税の一括徴収・普通徴収
- ハローワーク - 失業保険(基本手当)の受給手続き
※ 本記事は一般的な制度解説です。個別の状況については各公的機関や専門家にご相談ください。