傷病手当金の基礎知識
傷病手当金は、業務外の病気やケガで仕事を休み、給与が支払われない期間に健康保険から支給される給付金です。会社員や公務員など健康保険に加入している被保険者が対象で、生活を支える重要なセーフティネットとなっています。ここでは、傷病手当金の仕組み・計算方法・申請手続きについて詳しく解説します。
傷病手当金の支給要件
傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガであること:業務中・通勤中の病気やケガは労災保険の対象となり、傷病手当金の対象外です。
- 療養のために労務に服することができないこと:医師の診断書により、仕事に就くことが困難であると認められる必要があります。
- 連続して3日間の待機期間を完成していること:休業の最初の3日間は「待機期間」として支給されません。4日目以降が支給対象となります。
- 給与の支払いがないこと:休業中に給与が支払われている場合は支給されません。ただし、給与が傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給されます。
支給額の計算方法
傷病手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で求められます。
支給日額 = 支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3
標準報酬月額は、毎月の給与(交通費を含む総支給額)をもとに等級表に当てはめた金額です。健康保険証や給与明細に記載されていることが多く、4月〜6月の給与をもとに毎年9月に改定されます。計算結果の日額は1円未満が切り捨てとなり、支給額は「日額 × 支給対象日数」で算出されます。
支給期間は最大18ヶ月(通算)
2022年1月の法改正により、傷病手当金の支給期間は「通算して1年6ヶ月(18ヶ月)」に変更されました。以前は支給開始日から暦上1年6ヶ月が上限でしたが、現在は途中で出勤した期間を除いて通算できるため、実際に支給される期間が長くなるケースもあります。例えば、3ヶ月休職後に復帰し、再度休職した場合でも、通算18ヶ月に達するまで支給を受けることが可能です。
待機期間の注意点
待機期間は連続3日間である必要がありますが、有給休暇・土日祝日・公休日を含めることができます。例えば、金曜に発症して土日を挟めば、月曜から支給対象となります。ただし、2日休んで1日出勤し、また休むといったケースでは待機期間は完成しません。連続3日間がポイントです。
申請方法と必要書類
傷病手当金の申請は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)に「傷病手当金支給申請書」を提出して行います。申請書には以下の記入・添付が必要です。
- 被保険者記入欄:振込先口座、申請期間など
- 事業主記入欄:勤務状況、給与支払い状況など
- 療養担当者(医師)記入欄:病名、労務不能と認めた期間など
申請は原則として1ヶ月ごとに行うのが一般的です。時効は支給対象日ごとにその翌日から2年間ですので、過去に申請していなかった期間があっても、2年以内であれば遡って請求できます。
傷病手当金と他の給付との調整
傷病手当金は、以下の給付金と併給調整が行われます。
- 出産手当金:傷病手当金と出産手当金の両方の受給要件を満たす場合、出産手当金が優先されます。傷病手当金が出産手当金より多い場合は差額が支給されます。
- 障害厚生年金・障害手当金:障害厚生年金が支給される場合、傷病手当金は調整されます。年金額の日額換算が傷病手当金の日額より少ない場合は差額が支給されます。
- 老齢退職年金:退職後に傷病手当金の継続給付を受ける場合、老齢年金との調整が行われます。
休職中の社会保険料について
休職中も健康保険料・厚生年金保険料の支払いは継続します。通常は給与から天引きされますが、給与が支給されない休職中は、会社が立て替えて後日精算する方法や、毎月振り込む方法が取られます。傷病手当金は非課税のため所得税はかかりませんが、住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、休職中でも支払いが必要な点に注意しましょう。