退職時にやるべきことの全体像
退職は人生の大きな転機であり、適切な手続きを行わないと経済的な損失やトラブルにつながる可能性があります。退職の意思を固めてから実際に退職し、その後の生活基盤を整えるまでには、多くの手続きが必要です。このガイドでは、退職前から退職後まで、時系列に沿ってやるべきことを徹底解説します。
退職前にやるべきこと
退職の意思が固まったら、まずは就業規則を確認しましょう。多くの企業では「退職の1〜3ヶ月前までに申し出ること」と定められています。法律上は2週間前の通知で退職が可能ですが、円満退職のためには就業規則に従うことが望ましいです。退職届(または退職願)は直属の上司に提出し、退職理由は「一身上の都合」とするのが一般的です。
有給休暇の残日数も必ず確認しましょう。有給休暇の取得は労働者の権利であり、退職時に残っている有給を消化することは法的に保障されています。引き継ぎスケジュールと調整しながら、計画的に有給を消化していきましょう。退職金がある場合は、金額の概算や支払時期、「退職所得の受給に関する申告書」の提出方法も事前に確認しておくことが重要です。
社会保険の切替手続き
退職後に最も重要なのが、健康保険と年金の切替手続きです。転職先が決まっていない場合、健康保険は3つの選択肢があります。
- 任意継続保険:退職前の保険を最大2年間継続。保険料は全額自己負担(在職中の約2倍)ですが、扶養家族がいる場合は追加保険料なしで家族も加入できるメリットがあります。退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。
- 国民健康保険:市区町村の窓口で手続き。保険料は前年の所得に基づいて計算され、扶養の概念がないため家族それぞれに保険料がかかります。退職日の翌日から14日以内に手続きが必要です。
- 家族の扶養に入る:配偶者など家族が会社員の場合、年収130万円未満であれば扶養に入れる可能性があります。保険料の自己負担がゼロになるため、該当する場合は最もお得な選択肢です。
年金については、会社員(第2号被保険者)から国民年金(第1号被保険者)への切替が必要です。退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で手続きしましょう。配偶者が第3号被保険者だった場合は、同時に第1号への変更手続きも必要です。国民年金保険料は月額16,980円(2026年度)で、収入が大幅に減少した場合は免除・猶予制度の利用も検討しましょう。
税金関連の手続き
退職時に注意すべき税金は主に「住民税」と「所得税」です。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職後も支払いが続きます。6〜12月に退職する場合は、残りの住民税を最後の給与から一括徴収してもらうか、退職後に届く納付書で自分で支払う(普通徴収)か選択できます。1〜5月に退職する場合は、退職月までの残額を最後の給与から一括徴収するのが原則です。
所得税については、年の途中で退職し、年末までに再就職しなかった場合は翌年の確定申告が必要です。在職中の源泉徴収は年収ベースで計算されているため、年間の実際の所得が想定より少ない場合は還付を受けられる可能性が高いです。源泉徴収票は退職時に必ず受け取りましょう。
失業保険(雇用保険の基本手当)
転職先が決まっていない場合は、ハローワークで失業保険の手続きを行いましょう。自己都合退職の場合、7日間の待期期間と2ヶ月の給付制限期間があるため、実際に手当を受け取れるのは退職から約2ヶ月半後になります。会社都合退職の場合は待期期間7日後から受給可能です。
基本手当の日額は、退職前6ヶ月の賃金をもとに計算され、おおむね退職前の月収の50〜80%程度です。給付日数は、退職理由・年齢・勤続年数により90日〜330日の範囲で決まります。手続きは離職票を受け取り次第、早めにハローワークに行くことをおすすめします。
退職後の生活設計のポイント
退職後の生活費は、在職中とは大きく異なります。健康保険料・年金保険料は全額自己負担になり、住民税の支払いも続きます。失業手当が受給できる場合でも、給付制限期間中は収入がゼロになるため、最低でも3〜6ヶ月分の生活費を確保してから退職することが理想です。企業型確定拠出年金(DC)に加入していた場合は、退職後6ヶ月以内にiDeCoまたは転職先の企業型DCへ移管する手続きも忘れずに行いましょう。放置すると国民年金基金連合会に自動移管され、手数料が差し引かれるうえ運用もされません。