住宅ローン控除の基礎知識
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した場合に、年末のローン残高に応じた金額を所得税から控除できる制度です。2022年の税制改正で控除率が1%から0.7%に引き下げられた一方、控除期間が最長13年に延長されるなど、制度の内容が大きく変わりました。
住宅ローン控除の主な要件
- 返済期間が10年以上の住宅ローンであること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 床面積が50平方メートル以上であること(新築で合計所得1,000万円以下の場合は40平方メートル以上)
- 取得後6ヶ月以内に入居し、控除を受ける各年の12月31日まで居住していること
- 2024年以降の新築住宅は省エネ基準適合が必須
控除額の計算方法
住宅ローン控除の年間控除額は次の計算式で求められます。
年間控除額 = 年末のローン残高(借入限度額が上限) × 0.7%
控除額はまず所得税から差し引かれ、控除しきれない分は翌年度の住民税から控除されます。ただし、住民税からの控除には「課税所得金額 × 5%(最大97,500円)」という上限があります。
2024年以降の省エネ基準必須化
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準適合住宅以上でなければ住宅ローン控除の対象外となりました。これは脱炭素社会の実現に向けた政策の一環です。ただし、2023年末までに建築確認を受けた住宅については、経過措置として借入限度額2,000万円・控除期間10年の条件で控除を受けることが可能です。
子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せ措置
19歳未満の子を有する世帯(子育て世帯)や、夫婦のいずれかが40歳未満の世帯(若者夫婦世帯)については、新築住宅の借入限度額が上乗せされます。認定長期優良住宅では5,000万円、ZEH水準省エネ住宅では4,500万円、省エネ基準適合住宅では4,000万円が上限となります。
住宅ローン控除を受けるための手続き
住宅ローン控除を初めて受ける年は、確定申告が必要です。2年目以降は会社員の場合、年末調整で手続きが可能です。確定申告の際は、登記事項証明書、住宅ローンの年末残高証明書、売買契約書の写しなどが必要になります。
住宅ローン控除の実務ガイド
初年度の確定申告に必要な書類チェックリスト
住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須です。会社員でも自ら税務署に提出する必要があります。以下の書類を揃えておきましょう。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書(国税庁HPでダウンロード)
- 住宅ローンの年末残高証明書(金融機関から10月〜翌1月に郵送される)
- 建物・土地の登記事項証明書(法務局で発行、600円)
- 売買契約書または工事請負契約書の写し
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバー確認書類
- 認定長期優良住宅等証明書(認定住宅の場合)
- 住宅省エネルギー性能証明書(ZEH・省エネ基準適合住宅の場合)
e-Taxで電子申告すれば、登記事項証明書の添付が省略できるケースもあります。確定申告期間は2月16日〜3月15日ですが、還付申告のみの場合は1月から受付されます。早く申告すれば還付金も早く受け取れるので、2月前半の提出がおすすめです。
所得税から引ききれない場合の住民税控除
住宅ローン控除は所得税から優先的に控除されますが、控除しきれない分は翌年度の住民税から控除されます。住民税からの控除額には上限があり、2022年以降入居の場合は所得税課税総所得金額の5%(最大9.75万円)までです。年収500万円程度で住宅ローン残高が3,000万円ある場合、年間控除額21万円のうち、所得税から約13万円・住民税から約8万円が引かれるイメージです。
ペアローン vs 連帯債務 vs 単独ローン
共働き夫婦が住宅購入する際、ローンの組み方で控除額が大きく変わります。3つの方式の違いを理解しましょう。
| 方式 |
特徴 |
控除 |
| ペアローン | 夫婦それぞれが別々にローンを組む。2本のローンで諸費用も2倍 | 夫婦それぞれが満額控除可能。合計で最大控除額の2倍 |
| 連帯債務 | 1本のローンを夫婦で負担。フラット35が代表例 | 持分比率に応じて夫婦それぞれが控除 |
| 連帯保証(単独ローン) | 夫のみが債務者、妻は保証人 | 夫のみが控除。妻は控除なし |
控除のメリットを最大化するにはペアローンが有利ですが、片方が退職・育休で収入が減ると、その分は控除を使い切れないというデメリットがあります。妻の出産・育休を見込むなら、夫の単独ローンで組む方が結果的に控除を最大活用できるケースも多いです。
ふるさと納税との併用で損しないために
住宅ローン控除は所得税から控除されるため、ふるさと納税の控除枠(住民税の特例分)に影響する場合があります。特に「ふるさと納税はワンストップ特例で全額住民税控除」の構図は、住宅ローン控除と相性が良いパターン。一方、確定申告でふるさと納税を申告すると、所得税から控除されてしまい、住宅ローン控除と競合してしまいます。
住宅ローン控除初年度の注意点:初年度は確定申告が必須のため、ふるさと納税もワンストップ特例ではなく確定申告でまとめて申告する必要があります。このとき、ふるさと納税の所得税控除分だけ住宅ローン控除の恩恵が減る可能性があるため、当年のふるさと納税額は通常より抑え気味にすると損しにくくなります。
繰上返済とローン控除のバランス
「早く返した方が得」と思いがちですが、住宅ローン控除期間中(13年間)は慎重に。金利0.5%・控除率0.7%の場合、控除額の方が金利負担より大きいため、繰上返済せずに残高を維持した方が有利です。計算上は「金利 < 控除率」の間は繰上返済しない方が得。控除期間終了(14年目)以降に一気に繰上返済するのがセオリーです。
ただし、繰上返済した結果ローン残高が控除対象の限度額(2026年で新築認定住宅なら4,500万円)を下回ると控除額も減ります。「返済期間は10年以上残す」も必須条件で、繰上返済で残期間が10年を下回ると控除資格を失うので注意しましょう。
転勤・売却・リフォーム時の控除継続条件
- 単身赴任で本人だけ転勤:家族が引き続き居住していれば控除継続。
- 家族全員で転居:控除は中断されるが、再入居すれば残期間の控除が復活。
- 売却:その年以降、控除は使えなくなる(所有権を失うため)。
- 賃貸に出す:居住していないので控除は使えない。ただし再入居すれば復活する。
- リフォーム(増改築等):100万円超の工事でリフォーム用の住宅ローン控除を別途利用可能。
2024年以降の改正で気をつけるポイント
2024年以降、省エネ基準を満たさない新築住宅は住宅ローン控除の対象外になりました。これから家を買う方は、物件選びの段階で「省エネ基準適合住宅か」を必ず確認してください。不動産会社に「建設住宅性能評価書」または「住宅省エネルギー性能証明書」を出してもらえない物件は、控除が受けられないと考えるべきです。
中古住宅については、築年数要件が緩和されました。1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅であれば、耐震基準適合証明書がなくても控除対象になります。中古マンション探しの際、築40年超は対象外と思われがちですが、1982年以降築ならチャンスがあります。