【2026年版】医療費控除の確定申告ガイド|対象・計算方法・セルフメディケーション税制

最終更新: 2026年3月

「医療費が多くかかった年は税金が戻ってくる」と聞いたことはありませんか? 医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に確定申告で所得税・住民税を軽減できる制度です。この記事では、医療費控除の対象になる費用、計算方法、セルフメディケーション税制との使い分け、確定申告の手順まで、2026年最新の情報をもとにわかりやすく解説します。

医療費控除とは? 基本の仕組み

制度概要

医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合に、超えた分を所得から差し引ける制度です。

確定申告をすることで、所得税の還付と翌年の住民税の軽減を受けられます。控除の上限は200万円です。

医療費控除は「所得控除」の一つです。所得控除とは、税金を計算する際に課税対象となる所得から差し引ける金額のことです。医療費控除を受けると、その分だけ課税される所得が減り、結果として所得税が還付され、翌年の住民税が軽減されます。

会社員の方は通常、年末調整で税金の精算が完了しますが、医療費控除は年末調整では受けられません。そのため、自分で確定申告をする必要があります。確定申告は毎年2月16日〜3月15日が申告期間ですが、還付申告(税金が戻ってくる申告)は1月1日から5年間いつでも提出可能です。

医療費控除の3つのポイント

1. 年間医療費が10万円(所得200万円未満の方は所得の5%)を超えた分が控除対象
2. 生計を一にする家族の医療費をまとめて申請可能
3. 確定申告が必須(年末調整では手続きできない)

対象になる医療費・ならない医療費

医療費控除の対象となるのは、「治療」を目的とした支出です。「予防」や「美容」を目的とした支出は原則として対象外です。以下の表で、対象になるもの・ならないものを確認しましょう。

対象になる医療費(主なもの)

カテゴリ 対象になる項目
病院・診療 診察費、入院費、手術費、検査費(治療目的)、往診費
薬代 処方薬、治療目的の市販薬(風邪薬・胃腸薬など)
歯科 虫歯治療、抜歯、金歯・銀歯、子どもの歯列矯正
出産 妊婦健診、分娩費、入院費(出産育児一時金は差し引く)
通院費 電車・バス代(公共交通機関)、やむを得ないタクシー代
介護 介護保険サービスの自己負担分(一部)、おむつ代(医師の証明あり)
その他 レーシック手術、補聴器(医師の処方あり)、あん摩・鍼灸(治療目的)

対象にならない医療費(主なもの)

カテゴリ 対象にならない項目
予防・健康 人間ドック(異常なし)、予防接種、サプリメント、健康食品
美容 美容整形、ホワイトニング、大人の歯列矯正(美容目的)
自家用車 通院のガソリン代、駐車場代
日用品 メガネ・コンタクトレンズ(一般的なもの)、マスク
入院関連 差額ベッド代(自己都合)、入院中の身の回り品
判断に迷ったら

「治療のために必要だったか」が判断基準です。例えば人間ドックで異常が見つかり治療を行った場合は、人間ドックの費用も医療費控除の対象になります。判断に迷う場合は、管轄の税務署に確認するのが確実です。

医療費控除の計算方法

医療費控除の計算式は非常にシンプルです。

計算式

医療費控除額 = 支払った医療費 − 保険金等で補填された金額 − 10万円

※ 総所得金額が200万円未満の方は「10万円」の代わりに「総所得金額×5%」を差し引きます。

※ 控除額の上限は200万円です。

ここでのポイントは、「保険金等で補填された金額」を差し引く必要があることです。具体的には以下のような給付金・保険金が該当します。

差し引く必要があるもの:生命保険の入院給付金、健康保険の高額療養費、出産育児一時金(42万円)、損害賠償金など

差し引かなくてよいもの:傷病手当金、出産手当金(これらは医療費の補填ではなく、収入の補填のため)

計算例

例1:会社員(年収500万円、総所得約356万円)の場合

年間医療費:30万円
保険金等の補填:5万円
医療費控除額:30万円 − 5万円 − 10万円 = 15万円

例2:パート(年収180万円、総所得約116万円)の場合

年間医療費:8万円
保険金等の補填:0円
足切り額:116万円 × 5% = 5.8万円(10万円より少ないのでこちらを使用)
医療費控除額:8万円 − 0円 − 5.8万円 = 2.2万円

保険金の補填は「その治療に対して」差し引く

保険金等で補填された金額は、その保険金に対応する医療費からのみ差し引きます。例えば入院Aに対する保険金が入院Aの費用を上回っても、その余りを他の医療費から差し引く必要はありません。つまり、マイナスにはならず0円として計算します。

医療費控除額を今すぐ計算

医療費と年収を入力するだけで、控除額と還付金の目安がわかります。

セルフメディケーション税制との選択

2017年に創設されたセルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。病院にはあまり行かないが、市販薬(OTC医薬品)をよく購入する方にとって有利な制度です。

セルフメディケーション税制

対象のOTC医薬品の年間購入額が1.2万円を超えた場合、超えた分を所得から控除できます。

控除の上限は8.8万円(購入額10万円分)です。健康診断や予防接種などの「健康の保持増進」の取り組みを行っていることが条件です。

どちらを選ぶべきか

比較項目 医療費控除 セルフメディケーション税制
足切り額 10万円(または所得の5%) 1.2万円
控除上限 200万円 8.8万円
対象費用 治療目的の医療費全般 対象OTC医薬品のみ
条件 特になし 健康診断・予防接種等の実施
向いている人 通院・入院が多かった年 市販薬の購入が多い人

重要:医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。どちらか一方を選択する必要があります。迷った場合は、それぞれの控除額を計算し、控除額が大きい方を選びましょう。

一般的な目安として、年間医療費が10万円を超える方は通常の医療費控除、病院にはほとんど行かないが市販薬を年間1.2万円以上購入する方はセルフメディケーション税制を選ぶのがお得です。

セルフメディケーション対象のOTC医薬品の見分け方

対象の市販薬はパッケージに「セルフメディケーション税制対象」と記載されていたり、レシートに対象商品であることが印字されています。主な対象品目は、スイッチOTC医薬品(医療用から転用された医薬品)で、風邪薬、鎮痛剤、胃腸薬、花粉症薬、湿布薬などが含まれます。

確定申告での申請方法(e-Tax対応)

医療費控除を受けるための確定申告は、以下の3つの方法で行えます。いずれの方法でも、事前に「医療費控除の明細書」を作成しておく必要があります。

1
e-Tax(スマホ・PC)で申告【おすすめ】

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からオンラインで申告できます。マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、自宅から24時間いつでも提出可能です。還付金の振込も早く(通常3週間程度)、最もおすすめの方法です。

2
郵送で申告

確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を印刷し、管轄の税務署に郵送します。e-Taxに対応していない方や、紙で提出したい方向けです。還付までに1〜2ヶ月かかります。

3
税務署の窓口で申告

管轄の税務署に直接出向いて申告します。確定申告期間中(2月16日〜3月15日)は混雑するため、事前予約が必要な場合があります。職員に相談しながら手続きしたい方向けです。

e-Taxでの申請手順

手順1:国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」をクリック
手順2:マイナンバーカードでログイン(マイナポータル連携がおすすめ)
手順3:「所得税」を選択し、給与所得の情報を入力(源泉徴収票をもとに)
手順4:「医療費控除」を選択し、明細書の内容を入力
手順5:控除額と還付金額を確認し、電子送信して完了

還付申告は5年間OK

税金が戻ってくる「還付申告」は、確定申告期間(2月16日〜3月15日)を過ぎても、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。例えば2025年分の医療費控除は、2030年12月31日まで申告可能です。過去の分を忘れていた方も、今からでも申請できます。

医療費控除の明細書の書き方

2017年分の確定申告から、医療費の領収書の提出は不要になりました。代わりに、「医療費控除の明細書」を作成して提出します(領収書は5年間保存が必要)。

明細書に記入する項目

1. 医療を受けた人の氏名:本人・配偶者・子どもなど、誰の医療費かを記入します。
2. 病院・薬局の名称:医療費を支払った医療機関や薬局の名前を記入します。
3. 医療費の区分:診療・治療、介護保険サービス、医薬品購入、その他の4区分から選びます。
4. 支払った医療費の額:1年間に支払った金額の合計を記入します。
5. 保険金等で補填される金額:生命保険の給付金、高額療養費など、補填された金額を記入します。

時短テクニック

健康保険組合から届く「医療費のお知らせ」(医療費通知)を利用すると、明細書の記入を大幅に省略できます。

医療費通知に記載された医療費については、通知書を添付するだけでOKです。ただし、医療費通知に記載されていない費用(市販薬、通院交通費など)は自分で明細書に記入する必要があります。

e-Taxで申告する場合は、「確定申告書等作成コーナー」の画面上で医療費の情報を入力すると、自動的に明細書が作成されます。医療費の件数が多い場合は、「医療費集計フォーム」(Excel形式)を国税庁サイトからダウンロードし、事前に入力しておくと効率的です。

還付金額の目安(年収別テーブル)

医療費控除による還付金額は、「医療費控除額 × 所得税率」で計算されます。さらに、翌年の住民税も「医療費控除額 × 10%」が軽減されます。以下は、保険金等の補填がない場合の年収別・医療費別の還付金+住民税軽減の合計額の目安です。

年収 所得税率 医療費15万円 医療費30万円 医療費50万円
300万円 10% 約10,000円 約40,000円 約80,000円
400万円 10% 約10,000円 約40,000円 約80,000円
500万円 20% 約15,000円 約60,000円 約120,000円
600万円 20% 約15,000円 約60,000円 約120,000円
700万円 23% 約16,500円 約66,000円 約132,000円
800万円 23% 約16,500円 約66,000円 約132,000円
1,000万円 33% 約21,500円 約86,000円 約172,000円

※ 上表の金額は概算です。実際の金額は各種控除や復興特別所得税の有無によって変わります。正確な金額は計算ツールでご確認ください。
※ 医療費15万円の場合、控除額は15万円−10万円=5万円として計算しています。

所得税率が高い人ほどお得

医療費控除は所得控除のため、所得税率が高い方ほど還付金額が大きくなります。同じ30万円の医療費でも、年収500万円(税率20%)の方は約6万円、年収1,000万円(税率33%)の方は約8.6万円の節税効果があります。家族の中で最も所得が高い人がまとめて申請するのがお得です。

あなたの還付金額を計算しよう

年収と医療費を入力するだけで、還付金額と住民税の軽減額がわかります。

家族分をまとめるテクニック

医療費控除は、生計を一にする家族の医療費を合算して申請できます。この「まとめるテクニック」を知っているかどうかで、還付金額に大きな差が出ます。

「生計を一にする」とは

「生計を一にする」とは、同じ財布で生活しているという意味です。具体的には以下のような関係が該当します。

同居の家族:配偶者、子ども、親、兄弟姉妹など
別居でも対象になるケース:単身赴任の夫(妻)、一人暮らしの大学生(生活費を仕送りしている場合)、別居の親(生活費や療養費を送金している場合)

まとめるときの3つのポイント

1
所得が最も高い人が申請する

医療費控除は所得控除のため、所得税率が高い人が申請するほど還付金額が大きくなります。例えば、夫(年収700万円・税率23%)と妻(年収300万円・税率10%)の場合、夫が申請すると同じ控除額でも還付金が約2倍になります。

2
家族全員の領収書を集める

家族それぞれの医療費を合算すると、1人では10万円に届かなくても家族合計で10万円を超えるケースが多くあります。年初から領収書を保管しておき、年末に集計する習慣をつけましょう。通院の交通費(電車・バス代)も忘れずにメモしておきます。

3
医療費のお知らせを活用する

健康保険組合から届く「医療費のお知らせ」を利用すれば、明細書の記入を省略でき、申告の手間が大幅に減ります。ただし、通知書に記載されるのは保険適用の医療費のみです。自費診療、市販薬、交通費は自分で記録しておく必要があります。

共働き家庭の具体例

夫(年収600万円)・妻(年収400万円)・子ども2人の4人家族の場合:
夫の医療費:3万円、妻の医療費:4万円、子ども2人の医療費:5万円 → 合計12万円
医療費控除額:12万円−10万円=2万円
夫が申請した場合の節税効果:2万円×(20%+10%)=約6,000円
個別に申告すると誰も10万円を超えないため、控除を受けられません。家族分をまとめることで初めて控除を受けられるケースです。

医療費控除を申請しよう

控除額の計算から確定申告の要否判定まで、当サイトのツールでサポートします。

よくある質問

医療費控除は年間いくらから申請できますか?
原則として年間の医療費が10万円を超えた場合に申請できます。ただし、総所得金額が200万円未満の方は、所得の5%を超えた金額が控除対象となるため、10万円未満でも申請できるケースがあります。例えば年収300万円(総所得約200万円)の方なら10万円が基準ですが、年収250万円(総所得約162万円)の方なら約8.1万円を超えれば申請可能です。
医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できますか?
いいえ、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。どちらか一方を選択して申告する必要があります。一般的に、年間の医療費が10万円を超える場合は通常の医療費控除が有利で、病院にはあまり行かないが市販薬を多く購入する方はセルフメディケーション税制が有利です。両方を計算して、控除額が大きい方を選びましょう。
家族の医療費もまとめて申請できますか?
はい、生計を一にする家族の医療費はまとめて申請できます。「生計を一にする」とは、同居している家族のほか、別居でも生活費を仕送りしている子どもや親も含まれます。家族の中で最も所得税率が高い人が申請すると、還付金額が多くなるためお得です。
医療費控除でいくら戻ってきますか?
還付金額は「(医療費−保険金等−10万円)×所得税率」で計算されます。例えば年間医療費が30万円、保険金補填なし、所得税率20%の方の場合、(30万−10万)×20%=4万円が所得税から還付されます。さらに住民税も翌年約2万円軽減されるため、合計で約6万円の節税効果があります。
医療費の領収書は提出が必要ですか?
2017年分の確定申告から、領収書の提出は不要になりました。代わりに「医療費控除の明細書」を作成して提出します。ただし、領収書は5年間の保存義務があり、税務署から提示を求められる場合があります。健康保険組合から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を利用すれば、明細書の記入を省略できます。