定年退職後の手取りはいくら?2026年版|年金・再雇用・税金を解説
最終更新: 2026年3月
定年退職後のお金の不安は多くの方が感じるものです。年金の額面と手取りはどう違うのか、再雇用で働いたら年金は減るのか、退職金の税金はいくらか。この記事では、定年退職後の「手取り」に焦点を当て、年金・再雇用・退職金・健康保険・確定申告まで網羅的に解説します。
年金受給額と手取りの違い
年金の「額面」と「手取り」は異なります。年金から差し引かれるのは以下の4つです。
・所得税・復興特別所得税
・住民税
・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料・75歳以上)
・介護保険料(65歳以上)
| 年金額面(年額) | 所得税+住民税 | 国保+介護 | 手取り | 手取り率 |
|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 0円 | 約12万円 | 約138万円 | 92.0% |
| 200万円 | 約3万円 | 約15万円 | 約182万円 | 91.0% |
| 250万円 | 約10万円 | 約20万円 | 約220万円 | 88.0% |
| 300万円 | 約18万円 | 約27万円 | 約255万円 | 85.0% |
厚生年金の平均受給額は月額約14.5万円(年額約174万円)、国民年金のみの場合は月額約5.6万円(年額約67万円)です。夫婦2人の世帯では合計で月額約22万円前後が平均的な受給額となっています。
年金収入は「雑所得(公的年金等)」として課税されますが、公的年金等控除が適用されます。65歳以上で年金収入330万円以下の場合、110万円の控除があります。そのため年金150万円の場合、雑所得は150万−110万=40万円。ここから基礎控除95万円を引くとマイナスとなり、所得税はゼロです。
年金受給額を入力して、税金・社会保険料控除後の手取り額をシミュレーション。
再雇用(嘱託)の給与と在職老齢年金
定年後に再雇用(嘱託)として働く場合、給与は定年前の50〜70%が一般的です。再雇用中も厚生年金に加入し続けるため、将来の年金受給額が増えるメリットがあります。
在職老齢年金の仕組み
65歳以上で働きながら年金を受給する場合、「基本月額(年金÷12)+ 総報酬月額相当額(給与+直近1年のボーナス÷12)」が50万円を超えると、超過分の半額が年金からカットされます。
支給停止額(月額)=(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 50万円)÷ 2
| 再雇用の月給 | 年金月額 | 合計 | 年金カット額 | 実際の年金支給 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 15万円 | 35万円 | 0円 | 15万円(全額) |
| 25万円 | 15万円 | 40万円 | 0円 | 15万円(全額) |
| 30万円 | 15万円 | 45万円 | 0円 | 15万円(全額) |
| 30万円 | 25万円 | 55万円 | 2.5万円 | 22.5万円 |
| 40万円 | 20万円 | 60万円 | 5万円 | 15万円 |
再雇用で月給25万円、年金月額15万円の場合、合計40万円で50万円以下のため年金は全額支給されます。多くの再雇用者はこの範囲内に収まるため、年金が大幅にカットされるケースは限定的です。
60歳以降の再雇用で賃金が60歳時点の75%未満に低下した場合、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」(最大で賃金の15%)が支給されます。ただし、2025年4月以降に60歳に達する方は最大10%に縮小されています。
退職後の健康保険(任意継続vs国保)
退職後の健康保険は主に3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 条件 | 保険料の目安 | メリット |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職後20日以内に申請・最長2年 | 月額2〜4万円 | 保険料が固定・扶養制度あり |
| 国民健康保険 | 誰でも加入可 | 前年所得による | 所得が下がれば保険料減 |
| 家族の扶養 | 年収180万円未満(60歳以上) | 0円 | 保険料負担なし |
任意継続と国保の比較ポイント
退職1年目は任意継続の方が安いケースが多いです。国保は前年の所得(=在職中の高い所得)に基づくため、保険料が高額になります。一方、退職2年目以降は所得が下がるため国保の方が安くなることが多いです。
任意継続は2022年の法改正によりいつでも任意に脱退できるようになりました。そのため、まず任意継続に加入し、翌年度の国保保険料が安くなったら脱退して国保に切り替える、という戦略が取れます。
任意継続の申請期限は退職日翌日から20日以内です。期限を過ぎると加入できないため、退職前に健保組合に手続き方法を確認しておきましょう。
退職金の税金計算
退職金は「退職所得」として他の所得とは分離して課税されます。退職所得控除により税負担が大幅に軽減される仕組みです。
退職所得控除額の計算
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
退職金の税額計算例
勤続30年、退職金2,000万円の場合を計算してみましょう。
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
課税退職所得 =(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
所得税 = 250万円 × 10% − 9.75万円 = 約15.3万円
住民税 = 250万円 × 10% = 25万円
合計税金 = 約40万円(手取り約1,960万円)
退職金2,000万円に対して税金は約40万円(実効税率約2%)と非常に優遇されています。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、源泉徴収で完結し確定申告は原則不要です。
| 勤続年数 | 控除額 | 退職金1,500万 | 退職金2,000万 | 退職金2,500万 |
|---|---|---|---|---|
| 25年 | 1,150万円 | 税約15万 | 税約55万 | 税約105万 |
| 30年 | 1,500万円 | 税0円 | 税約40万 | 税約80万 |
| 35年 | 1,850万円 | 税0円 | 税約8万 | 税約45万 |
| 38年 | 2,060万円 | 税0円 | 税0円 | 税約28万 |
確定申告の要否判定
定年退職後、確定申告が必要かどうかは状況によって異なります。
確定申告が必要なケース
・年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
・退職金の「退職所得の受給に関する申告書」を未提出の場合
・年金収入が400万円超の場合
・年金以外の所得が20万円超の場合(不動産収入、株式譲渡益等)
・2か所以上から年金・給与を受けている場合
確定申告した方が得なケース
・退職年に医療費が10万円以上かかった場合(医療費控除)
・退職後に国民健康保険料・任意継続保険料を支払った場合(社会保険料控除)
・ふるさと納税をした場合(ワンストップ特例が使えない年のため)
・退職年の前半で給与から源泉徴収されており、年末調整がない場合(還付の可能性大)
3月に定年退職した場合、1〜3月の給与から源泉徴収された税金が過大になっている可能性が高いです。年末調整が行われないため、確定申告をすることで数万〜十数万円の還付を受けられるケースが多くあります。
年金手取り・退職金の税金・老後資金をまとめて計算できます。
よくある質問Q&A
- 年金200万円の場合、手取りは約185〜190万円(手取り率90〜95%)。差し引かれるのは所得税・住民税・国保料・介護保険料です。受給額が多いほど手取り率は下がります。
- 退職1年目は任意継続が安いケースが多く、2年目以降は国保が安くなることが多いです。まず任意継続に加入し、翌年度に国保が安くなったら切り替える戦略がおすすめです。
- 給与+年金の月額合計が50万円を超えると、超過分の半額が年金からカットされます。月給25万円+年金15万円=40万円なら全額支給されます。多くの再雇用者は影響を受けません。
- 退職所得控除により大幅に軽減されます。勤続30年・退職金2,000万円の場合、税金は約40万円(実効税率約2%)。「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば確定申告は原則不要です。
- 年の途中で退職した場合、年末調整がないため確定申告が必要になるケースが多いです。特に退職年に医療費控除やふるさと納税がある場合、国保料を支払った場合は税金の還付を受けられる可能性が高いです。