年金受給者の年収の壁2026|在職老齢年金・税金・扶養の境界線

最終更新: 2026年3月

年金を受給しながら働くシニアにとって、「年金が減らされるライン」「税金がかかるライン」「扶養に入れるライン」は死活問題です。このガイドでは、年金受給者特有の年収の壁を整理し、損をしない働き方と確定申告の要否を解説します。

在職老齢年金の支給停止基準(50万円)

在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働いている65歳以上の方に適用される年金減額の仕組みです。

基準

年金の基本月額 + 総報酬月額相当額 > 50万円の場合、超えた分の半額が年金から支給停止されます。

計算の仕組み

用語 内容
基本月額 老齢厚生年金の月額(加給年金を除く)
総報酬月額相当額 月給 + 直近1年の賞与÷12
支給停止額 (基本月額 + 総報酬月額相当額 − 50万円)÷ 2

具体的なシミュレーション

年金月額 給与月額 合計 支給停止額 受取年金
10万円 30万円 40万円 0円 10万円
10万円 45万円 55万円 2.5万円 7.5万円
15万円 40万円 55万円 2.5万円 12.5万円
15万円 50万円 65万円 7.5万円 7.5万円
ポイント

在職老齢年金の対象は「厚生年金に加入している」場合のみです。厚生年金に加入しないパート(社保未加入)や自営業で働く場合は、いくら稼いでも年金は減額されません。また、老齢基礎年金(国民年金部分)は支給停止の対象外です。

年金+パート収入の場合の壁

年金受給者がパートで働く場合、「年金の壁」と「給与の壁」が同時に存在します。以下の表で整理します。

壁の種類 基準額 影響
所得税の壁 年金+給与の合計所得が基礎控除以下 所得税が発生
住民税非課税の壁 合計所得45万円以下(単身) 住民税が発生、各種給付の対象外に
社会保険の壁 給与年収106万/130万円 パート先で社保加入、または扶養から外れる
在職老齢年金の壁 年金+給与の月額50万円 年金の一部が支給停止
後期高齢者医療の壁 75歳到達 後期高齢者医療制度に移行
重要

年金受給者の場合、給与の壁だけでなく年金所得も合算して税金を計算します。年金月額10万円(年120万円)の方がパートで年収100万円を得ると、合計収入は220万円。給与だけなら非課税の範囲でも、年金を合算すると課税される可能性があります。

60〜64歳と65歳以上の違い

公的年金等控除の額が年齢によって異なります。65歳以上のほうが控除額が大きく、税制面で優遇されています。

年齢 公的年金等控除(年金330万円以下) 年金収入の非課税ライン
60〜64歳 60万円 約108万円
65歳以上 110万円 約158万円
年金の手取りを計算

年金収入・パート収入を入力して、税金・社保を差し引いた手取りを計算しましょう。

年金受給者の配偶者控除

年金受給者でも、配偶者控除を受けることは可能です。判定は年金収入から公的年金等控除を差し引いた「所得」で行います。

年齢 配偶者控除の対象となる年金収入上限 計算
60〜64歳 108万円以下 108万−60万(公的年金等控除)=48万円
65歳以上 158万円以下 158万−110万(公的年金等控除)=48万円

65歳以上で年金収入が158万円以下なら、もう一方の配偶者が配偶者控除(38万円)を受けられます。年金収入158万〜約243万円では配偶者特別控除が段階的に適用されます。

住民税非課税の年金受給額ライン

住民税非課税かどうかは、各種給付金や社会保障サービスの受給要件に影響するため、シニアにとって非常に重要です。

世帯構成 住民税非課税となる年金収入の上限(65歳以上)
単身世帯 約155万円
夫婦世帯(配偶者を扶養) 約211万円
夫婦+扶養親族1人 約246万円
住民税非課税のメリット

住民税非課税世帯は、介護保険料の軽減、高額療養費の自己負担限度額の引き下げ、各種給付金の受給資格など、多くの社会保障上の優遇を受けられます。年金収入が境界線近くの方は、パート収入の調整を検討しましょう。

年金に加えてパート収入がある場合、年金所得と給与所得を合算した合計所得金額で住民税非課税を判定します。パート収入が少しでもあると非課税から外れる可能性があるため、注意が必要です。

確定申告の要否判定

年金受給者には「確定申告不要制度」があります。以下の両方を満たす場合、確定申告は不要です。

確定申告不要の条件

条件1:公的年金等の収入金額が400万円以下

条件2:公的年金等以外の所得金額が20万円以下

ケース 年金収入 パート所得 確定申告
年金のみ 200万円 なし 不要
年金+少額パート 200万円 15万円 不要
年金+パート 200万円 25万円 必要
高額年金 450万円 なし 必要
注意

確定申告が不要でも、住民税の申告は別途必要な場合があります。また、医療費控除や社会保険料控除などで税金の還付を受けたい場合は、確定申告をしたほうが得になることがあります。

年金の手取り・確定申告を確認

年金額・パート収入を入力して、税金と手取りをシミュレーション。

よくある質問Q&A

在職老齢年金の支給停止基準はいくらですか?
年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えると、超えた分の半額が年金から支給停止されます。例えば年金月額15万円、給与月額40万円の場合、合計55万円で50万円を超える5万円の半額2.5万円が支給停止です。
年金受給者は確定申告が必要ですか?
年金収入400万円以下、かつ年金以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要です(確定申告不要制度)。ただし、医療費控除などの還付申告をしたい場合は確定申告が必要です。住民税の申告は別途必要になる場合があります。
年金受給者の住民税非課税ラインはいくらですか?
65歳以上の単身者なら年金収入約155万円以下で住民税非課税です。夫婦世帯(配偶者を扶養)なら約211万円以下が目安。自治体によって若干異なります。
年金を受給しながらパートで働くと年金は減りますか?
パート先で厚生年金に加入した場合のみ在職老齢年金の対象です。厚生年金に加入しないパート(社保未加入)なら年金は減額されません。年金+給与の月額が50万円以下なら支給停止はありません。
シニアが配偶者の扶養に入ることはできますか?
税法上は65歳以上で年金収入158万円以下なら配偶者控除の対象です。社会保険の扶養は75歳まで可能で、60歳以上の場合は年収180万円未満が基準です。75歳以上は後期高齢者医療制度に移行します。

出典・参考資料

  • 日本年金機構「在職老齢年金」
  • 国税庁「公的年金等の課税関係」
  • 国税庁「年金受給者の確定申告不要制度」
  • 総務省「住民税の非課税限度額」
  • 厚生労働省「後期高齢者医療制度」